〔いんさいど世界〕 アマゾンの「木登り蛙」の粘液から万能薬 そういえば日本にはガマの油が……
ことしも、梅雨。
この時期をうっとうしく感じる人は世間の大多数でしょうが、雨の季節って、ぼくの場合は好きですね。
雨にぬれたアジサイ、子どもたちのグルグル傘。
最近はみかけなくなりましたが、昔はよく、カエルを見かけたものです。
あのカエルたち、どこに消えてしまったんでしょう?
ということで、きょうはカエルに関する話題を。
カエルの粘液から、「万能薬」が生まれそうだ、という話です。
ところはブラジル。アマゾン川の上流。ペルーとの国境に近い原生林の森に、「カンボ」という樹上生活をしているカエル、「木登り蛙」がいるんだそうです。英語名は「ジャイアント・モンキー・フロッグ」。
樹上にいるのでモンキーという名が付いているようなんです。
その「カンボ」の皮膚の粘液に――これを英語で「スライム」というんですが、それにとんでもない成分が含まれているんだそうです。
もちろん、それに昔から気づいていたのは、地元に住む原住民の人たち。
「カンボ」の粘液を小枝で擦って採取したものを乾燥させておき、病人が出ると、それに唾を混ぜて液状化し、それを楊枝のような尖った棒の先につけて、皮膚をちょんちょん刺して接種すると、病気が治るんだそうです。
それにしてもアマゾンの人たちってすごいですね。カエルの粘液に薬効があることに、どうやって気づいたのでしょうか?
この粘液、実はそれ自体としては毒なんだそうです。でも、微量だとすごい効能がある。
それを発見したあたり、まさに「アマゾンの知恵」ですね。
ところで、この「カンボ」の粘液、いまブラジル政府が国家的なプロジェクトとして研究・開発に乗り出しているそうです。
薬品化に成功すれば、大変な外貨収入が期待できる。
それでシルヴァ大統領のお声係で、ブラジル政府の環境省が昨年から薬品化プロジェクトに取り組んでいるわけです。
カエルの粘液が国家プロジェクトになってるというから驚きですが、実はブラジルって国、一度、動物資源の薬品活用の面で苦い目に遭っているのですね。
アマゾンに住み「ジャララカ」という毒蛇の毒液が血圧によく効くってことを、外国の製薬会社がゲットし、商品化して、年に2000億円近くも売り上げたことがあるんです。
もう二度と、そんなことはさせない、こんどこそ自力で薬品化に成功してみせる、というのが、シルヴァ大統領以下の願いなんだそうです。
ところで、この「カンボ」の粘液の効能ですが、病気はもちろん、傷にもよく効くといいます。それから、集中力を高め、感覚を研ぎ澄ます働きもあって、地元の人たちは狩に出かけるとき、接種してから行くんだそうです。
ここまで書いて来て、いま気づいたんですが、カエルの粘液といえば、日本だって昔から、薬として有効活用していましたよね。
そう、あれ、あのガマの油。
あれって粘液でつくるんじゃないですか?
だったら、もういちど、現代のテクノロジーを駆使して、「ガマの油」新薬なんていうのをつくってみていいかも知れません。
それから、ちょっとキタナイ話になるので、あいまいに言っちゃいますが、日本ではナントカの面にナントカといいますよね。
あれひとつとっても、考えればすごいことですよね。
カエルって、粘液による顔面防護で、ナントカをひっかけられても平気なわけですから。
カエルたちって、すごい人たち(?)だったんですね。
近頃、見かけなくなった日本のカエルさんたち、これから大切にするから、もう一度、帰ってくれ――カエルよ、帰れって言いたいような気がします。
カエルの泣かない梅雨って、なんか味気ないですし。
ニューヨーク・タイムズ紙に出ていた、ブラジルの木登り蛙のお話でした。