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2006-07-24

〔NEWS〕 レバノン南部 「死の街道」 脱出の一家をミサイルが襲う

 レバノン南部の「避難路」が「殺戮地帯」と化している。イスラエルの退去勧告の期限から一夜明けた7月23日の日曜日、国境地帯から北に向かう道路では、ミニバンなどで脱出する住民に対して、イスラエル軍がミサイルで攻撃、レバノン赤十字社によると、車両10台、オートバイ2台が破壊された。

 英紙ガーディアン(電子版、24日付け)で、同紙のスザンヌ・ゴールデンバーグ記者が現地から報じた。

 彼女の現場からのレポートによると、23日午前10時過ぎ、国境から8キロから離れたカフラ地区の路上で、悲劇は起きた。

 カフラから15キロほどのところにあるエルティリ村から3台のミニバンに分乗して、北に向かって避難していたシャイタス一族に向かって、イスラエル軍が(おそらくはヘリコプターから)対戦車ミサイルを発射し、3台のうちの1台に命中した。

 被弾したミニバンに乗っていたのは、54人のシャイタス一族のうちの19人。
 3列目の後部座席にいた3人は即死し、残る16人は被弾あるいはその直後の路外転落事故で負傷した。

 救急車が駆けつけた現場に、同紙のゴールデンバーグ記者も急行し、以下のような状況を目の当たりにした。

 彼女の記事の書き出しの一節を、拙訳で紹介すると、こうなる。

 * 救急隊員はアリ少年に母親の命の維持する仕事を与えた。12歳の少年は、彼ができることを、した。「ママ、ママ、眠っちゃだめだってば」。母親のあごを摩るりながら、アリはすすり泣いた。黒のヴェールの下で、母親の目がゆっくり閉じられていく。「死にそうだわ」と母親がため息をつくように言った。「そんなこと言っちゃだめだよ、ママ」と、アリ少年が哀願した。そして次の瞬間、アリ少年は涙ながらに地面に倒れこんだ。

 イスラエル軍がレバノン南部国境地帯の住民に出した退去勧告の期限は前日の土曜日の午後7時だった。
 シャイタス一族は翌日(23日の日曜日)の朝、3台のミニバンに分乗して、リタニ川の北の安全地帯を目指し、エルティリ村を出発した。

 ミニバンに分乗したのが命取りになった。
 イスラエル軍はミニバンやトラックなどを「ターゲット」とみなすと再三にわたって警告していた。ヒズボラがカチューシャ・ロケットの移送に使っているとして撃破を予告していたのだ。

 白旗をかかげていれば大丈夫と思ったのが、シャイタス一族の「誤算」だった。

 国境から北に向かい道路は海岸沿いの道も山沿いの道も、23日のイスラエル軍の攻撃で寸断され、ミサイル攻撃を受けた車両の残骸が道路をふさいでいる。
 被弾した車両からは黒煙が上がり、車の中には遺体が収容もされず、放置されたままだ。イスラエル軍の再攻撃を恐れて、収容できないでいるのだ。

 そんな殺戮地帯を、ゴールデンバーグ記者は「死の街道(Highways of death)」と書いた。


http://www.guardian.co.uk/syria/story/0,,1827422,00.html

Posted by 大沼安史 at 03:17 午後 |

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