〔For the Record〕 「ザルカウィも人間。人の死をどうして喜んでいられよう」 息子のニコラスを斬首された父、マイケル・バーガー氏が哀悼の意
2004年5月8日、イラクのバグダッド市内の路上で、首のない死体が発見された。ユダヤ系アメリカ人である青年実業家、ニコラス・バーグ氏(当時、26歳)の遺体だった。その3日後、マレーシアのイスラム系サイトにロンドンから何者かがビデオ・クリップをアップした。ビデオには、ニコラス氏の「斬首」(死後に切断の疑いが濃厚)の場面が写っていた。
そして、ニコラス氏を殺害したものは、ザルカウィである、とのキャンペーンが張られた。
それから2年後、米軍による、そのザルカウィの殺害。
ニコラスの父親であるマイケル・バーグ氏が6月7日、CNNに登場し、インタビューに答えた。
そのインタビューの内容が、ミネソタの有力紙、スタートリビューンに収録されていたので、一部を記録としてとどめておきたい。
マイケル氏は、ザルカウィの死について意見を求められ、以下のように述べた。
■ 「そうですね。私の反応は、人が死んだときはいつでも残念な気持ちになります。ザルカウィも一人の人間。彼にも家族があり、私たちがニック(ニコラスさん)を殺されたときと同じように反応しているはずです。それが辛い。」
(Well,my reaction is I'm sorry whenever any human being dies. Zarqawi is a human being. He has a family who are reacting just as my family reacted when Nick was killed, and I feel bad for that.)
そんなマイケル氏に対して、CNNのアンカーは、こんな質問を浴びせた。
「でも、みんな考えることだけど、『あいつが死んで嬉しい、息子を殺した男が死んで』って思う瞬間ってないんですか?」
これに対するマイケル氏の答え――。
■ 「いえ、ありません。ほかの人が死んで、人は喜ぶことができるのでしょうか?」
( No. How can a human being be glad that another humann being is dead? )
マイケル氏はイラク戦争に批判的であることを理由に、米国内のタカ派サイトで非難されたこともある人だ。
そうしたマイケル氏の反戦的な言辞が、息子のニコラスさん謀殺の背景にある、との見方もある。(この点については、大沼著、『戦争の闇 情報の幻』(本の泉社)参照)
CNNのアンカーの挑発にのらず、冷静に、ヒューマニステックな態度を貫き通したマイケル・バーグ氏に敬意を表する。
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Posted by 大沼安史 at 02:06 午後 | Permalink
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