〔いんさいど世界〕 ネット・デモクラシーに危機、迫る R・ライシュ氏が緊急警告
米国のリベラル派の論客、ロバート・ライシュ氏(現カリフォルニア大学バークリー校教授)が、インターネット・デモクラシーが危機に瀕していると警告を発している。
連邦議会下院で審議中の「2006年コミュニケーション機会・推進向上法」案が、ネットにおける通信の平等を破壊しようとしているとの警鐘だ。
この法案を阻止する戦いは、「インターネット・デモクラシー防衛戦争の最初のリアルな戦い」だとして、ライシュ氏は、反対運動への決起を呼びかけている。
この戦いは、日本に住む我々にとっても、無関係なことでは決してない。
ライシュ氏によれば、この法案はネット回線を管理する「パイプ」企業が、コンテンツのプロバイダー(供給者)に対して、「安定的かつ高速の配信」への対価(課金)を徴収する道を切り開くものだ。
光ファイバー網などの管(パイプ)を敷設、運営している「パイプ」企業の言い分は、こうした課金をして収入を増やさないと、次世代ネットワークの構築費を捻出できない、というものだが、金力(権力)のあるコンテンツ・プロバイダーならいざしらず、ブログなどさまざまコンテンツをネットに流している、フツーのネチズン(ネット市民)らは、「安定・高速」な通信から弾き出されてしまう。
「ネットは中立」であるべきなのに――ネット参加者は一個のネット市民として、誰でも・何でも平等なはずなのに、せっかく現実化している、そうした「ネット・デモクラシー」を、同法案は解体してしまうものだと、ライシュ氏は警告の鐘を鳴らしている。
「インターネットはゴリアテ(巨人)をダビデが倒しうる場所であり続けて来た……それは、あらゆる声が等しくある、唯一のフォーラム(広場)であり続けて来た」、それを富裕な権力が占有しようとしている、と。
これを道路にたとえるなら、高速道路は力のある者だけに公開します、フツーの人間は渋滞した一般道でがまんしなさい、というようなものである。
これはもう、「ネット世界のアパルトヘイト化」ではないか。
「ネット独占資本主義」による「ネット・デモクラシー」の破壊を許してはならない。
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