〔コラム 机の上の空〕 「レイチェル・コリーの淋しい死」
英紙ガーディアン(電子版、3月28日)に、英国人の歌手、ビリー・ブラグの歌が載っていた。
「レイチェル・コリーの淋しい死(The lonesome death of Rachel Corrie)」
ウィンドウズ・メディア・プレーヤーで再生して、聴いてみた。
ボブ・ディランのようなメロディーだった。
イギリスの田舎(カントリー)から、歌い出された歌だった。草の根から湧き出たプロテスト・ソングだった。
ビリー・ブラグは、「ブッシュ・ウォー・ブルース」で有名な反戦歌手である。
その彼が、レイチェル・コリーを歌ってくれた。
嬉しかった。
ガーディアン紙によれば、ビリー・ブラグは3月20日、大西洋を越える機中で、この歌を書いたという。そして2日後の22日、米国ミシガン州アナーバーのスタジオで録音した。
レイチェル・コリー。
米ワシントン州オリンピア出身。
2003年3月16日、イスラエルの占領するガザ地区にあって、住宅破壊に身を挺して抗議中、イスラエルのブルドーザーに轢かれ、死亡した。
23歳だった。
その生と死は、ビリー・ブラグの歌の歌詞に詳しい。
ひとりの、名もない若い女性の、勇気と悲劇。
ブリー・ブラグは彼女のことをなぜ歌うのか?
歌詞にこう綴っている。
「やつらが幕を下ろそうとし、レイチェル・コリーをあたかも存在しなかったようにしよとしている今、俺は黙って見ていることはできない」と。
去年、わたしは、レイチェル・コリーを忘れないために、彼女の遺稿集を取り寄せて読んだ。
「わたしの名前はレイチェル・コリー」というタイトルの、小さな本だった。
ビリー・ブラグの歌は、そんな彼女を、わたしたちの記憶のなかに、さらにくっきりと刻印する、墓碑銘のような歌だ。
そう、パレスチナ人の住宅を破壊するブルドーザーの前に立ちはだかり、たぶん恐怖に駆られ、ブルブル震えながら逃げようとしなかった、あなたの名前は、レイチェル・コリー。
ビリー・ブラグの歌声とともに、わたしもまた、あなたのことを忘れずにいることにしよう。
レイチェル・コリー。
あなたの名前を。
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Posted by 大沼安史 at 08:57 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink
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