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2006-01-08

〔教育改革情報 特報〕 米フロリダ州最高裁 バウチャーに違憲判決

 米フロリダ州最高裁は1月5日、同州政府が実施している教育バウチャー(学習券)について、税金を公教育以外の私立部分に投入することは州憲法に違反するとして、違憲判決を下した。

 ニューヨーク・タイムズ(電子版、1月6日付け)など、各紙が一斉に報じた。

 最高裁判事5対2による判決は、州当局にバウチャー・プログラムの停止を命じている。

 これに対して、ジェフ・ブッシュ州知事(大統領の実弟)は、州憲法の改正を含むあらゆる法的手段を駆使し、バウチャーの存続を図る方針だ。

 連邦最高裁への上訴の道は、ワシントン・ポストはありうるとしているが、ニューヨーク・タイムズ紙は、これはあくまでフロリダ州レベルの問題で、原・被告とも州法での決着で合意しているとして、ありえないとの見方を示している。

 フロリダ州最高裁が違憲判決を下したのは、ブッシュ知事が旗振りして進めてきた「機会奨学金(オポチュニティー・スカラーシップ)プログラム」。

 標準テストによる判定で「失敗学校」と認定された公立学校の生徒たちに学費を支給し、私立学校へ転校する道を切り開く制度だ。現在、730人の子どもたちが、制度の恩恵を受けているという。
  
 このバウチャーを違憲だとして訴えていたのは、州内に住む父母らで、それを教員組合などが支援していた。

 同州のバウチャー反対派は、税金が学費のかたちで私立の宗教学校に使われていることも、政教分離の原則に反するとして批判していたが、州最高裁はこの問題に直接、触れなかった。

 フロリダ州憲法には、「画一的(uniform)で、効率的で、安全で、世俗的で、高い質を持った無償教育を法律(州法)でもって十分に供給されねばならない」という条文があり、今回の最高裁判決は、バウチャーの対象校の私立学校はこのなかの「画一的」という部分にあてはまらない、「条文に違反する」と指摘している。

 このフロリダ州最高裁の判決について、AFT(全米教員連盟)では、「非常に励まされる」(コルテーズ副委員長)として評価している。

 これに対して、ブッシュ知事は「われわれの州のアカウンタビリエィー(結果責任)にとって、悲しい日になった」と語った。

 一方、バウチャー支持の立場から裁判にかかわって来た「司法研究所(The Institute for Justice)」は、今回の判決が全米の流れを変えるものではないとして、「影響は戸惑ってしまうほど浅いとの見方を示した。

 米国では米連邦最高裁が2002年に、オハイオ州クリーブランドで実施されているバウチャーについて合憲を判断を示すなど、バウチャ制度化への動きが強まっている。

 連邦議会はハリケーン「カトリーナ」で被災した子どもたち、35万人に対しバウチャーを支給し、就学を援助することを決定したばかりだ。

 〔大沼 解説〕

 今回のフロリダ州最高裁の判決は、「公教育は画一的でなければならない」とする、産業社会期の教育観にもとづく州憲法の条文をその通り適用し、短絡的に、というか、条文に従う「法の番人」として当然の判断したまでのことで、「教育バウチャー」の持つ可能性それ自体を否定するものではない。
 
 アメリカのバウチャーの悲しさは、ジェフ・ブッシュらのような新保守主義や、ネオリベ(新自由主義者)らによって、教員組合をたたきつぶし、宗教私学を利する手段として利用されていることだ。
 
 統制と支配の装置と化した公立学校システム。そのなかで喘ぐ子どもたちを救う、自由(リベ)の道具としての本来的なあり方、可能性に対しては、十分、目を向けられないのが現状だ。

 バウチャーの社会政策的意義を強調した、バークリーのクーンズやシュガーマンではなく、市場原理主義者のフリードマンがいまなお、バウチャーの教祖的な存在として注目を浴びているのは、そのためである。

 ネオコン、ネオリベらには、バウチャーによって、貧しい子どもたちを画一教育から救うという発想はない。
 ただただ、民主党リベラルの牙城となっている「公教育」をたたき潰したいだけである。

 そのような「バウチャー攻撃」に対して警戒感を持ち、「公教育」を守りたいという、制度リベラル派の気持ちは、わたしとしても痛いほどわかる。

 しかし、その「公教育」が、子どもたち(そして教師たちの)「学ぶ(教える)自由」を圧殺し続けるものであるなら、それに対しても、わたしたちはNOと言わなければならない。

 日本でも、とくに公立学校の子どもたち(教師たち)は悲鳴を上げ、NOを叫び続けているではないか。

 そうした自由を圧殺している公立学校システムを、別の形の「公教育」システムに変えていく、その手段として、バウチャーは有効であると考える。

 アメリカのミルウォーキーやクリーブランドといった都市部でバウチャー導入が構想されたとき、貧しい家庭の子どもたちのため、その先頭に立って闘ったのは、いずれもリベラルな(民主党)の黒人女性州議会下院議員である、という事実を忘れてはならない。

 フロリダにおける、ジェフ・ブッシュら一派は、開票操作で「ゴア新大統領」の当選を阻んで実兄のジョージ・ブッシュをホワイトハウスに送り込んだ挙句、「9・11」の朝には、ブッシュ大統領の「アリバイ工作」まで手伝った。

 そういう輩が、フロリダのバウチャーを進めて来たことは、たしかな事実である。
 しかし、それだからといって、バウチャーを彼らの専売特許にしてはならないことも、教育改革を構想する上で重要なことである。

 今回のフロリダ州最高裁判決を、バウチャーの使い道、使い方を、子どもたちに寄り添うかたちで冷静に考え直す、そんな機会としたい。
 

⇒   

http://www.nytimes.com/2006/01/06/national/06florida.html

Posted by 大沼安史 at 01:29 午後 2.教育改革情報 |

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