〔重要NEWS〕 ブッシュ大統領が秘密命令 令状なしで米国内で盗聴活動 NSA(国家安全保障局)が実施 グローバル盗聴網「エシェロン」を自国市民にも拡大 ニューヨーク・タイムズ紙が実態を暴露
米ニューヨーク・タイムズ(電子版)は12月16日、ブッシュ大統領の秘密命令の下、米国最大の情報機関、NSA(国家安全保障局)が、すでに3年もの間、令状なしに米国民らをターゲットに、Eメールや電話などの盗視・盗聴活動を続けて来た、と暴露報道した。
同紙は、ホワイトハウスからの要請で1年間、記事化するのを控えていたが、この間、さらに取材を積み重ね、報道に踏み切った。
自国民を対象とした、令状なしの盗視・盗聴活動は、米国民の市民的自由とプライバシーの権利という、アメリカの民主主義の基本を侵害するもの。
米国の憲法はもちろん、米国内で情報収集活動を行うにあたって裁判所からの令状交付を義務づけた「外国情報監視法(FISA)」にも違反する。
ブッシュ大統領は、こうした重大な法令違反を伴う情報収集活動の実施を、「9・11」後の2002年に「大統領秘密命令」でもって命じていた。
同紙によれば、令状なしに盗視・盗聴活動を行っていたのは、グローバル規模での情報収集網である「エシェロン」を運営する、世界最大の情報機関でもある、米国のNSA。
メリーランド州フォート・ミードに本部を置くNSAは、最高度の機密のヴェールに覆われた情報機関で、これまでは外国における情報収集活動のほか、裁判所から令状を取った上で、ワシントンやニューヨークの外国大使館、代表部などの電話やファクス、Eメールなどの盗視・盗聴を行って来た。
(大沼注:ニューヨーク・タイムズは、さらりとこう書いているが、いくら裁判所の許可をとっているとはいえ、このこと自体、重大な問題である。日本の大使館や国連代表部も日常的に、NSAのターゲットにされていると考えた方がいい)
ブッシュ大統領の「秘密命令」は、これをさらに拡大し、令状なしに、自国民や在米の外国人に対して盗視・盗聴を行うことを可能にした。
同紙によれば、NSAには「最大500人」の対象者リストがあり、ときどき、入れ替えが行われている。そうしたターゲットに対しては、「いつでも」盗視・盗聴が可能だ。
(大沼注:つまりは、24時間監視している。旅行など移動時にも監視しているのだろう)
「特別情報収集プログラム」という名の、このような秘密活動が行われていることは、ホワイトハウスの高官やNSAやCIA(中央情報局)の一部、米議会指導者ら、一握りのグループが知るのみ、だった。
議会指導者はチェイニー副大統領の執務室に呼び出され、NSAのヘイドン長官の立会いのもと、秘密活動の説明を受けたという。
(大沼注:ここでもまた、チェイニーの名が……。いわゆる「陰謀団」の黒幕なのか)
ニューヨーク・タイムズ紙のこの暴露報道に対し、ブッシュ大統領はコメントを拒否している。
同紙によれば、このNSAの「特別情報収集プログラム」に対しては、議会指導部などから懸念の声が上がり、昨年、活動が一時、停止され、いくつかのプログラムの「要素」が除去されるなど、いくらかの自己規制が行われた。
米司法省内にある、秘密の令状発行裁判所、「外国情報監視裁判所」の判事が、NSAが令状なしで収集した情報をもとに令状を請求して来ることに、苦情を述べたこともあったらしい。
もっとも、同裁判所に対する令状請求にしても、一般の刑事事件よりハードル(基準)が低い、安易なものだったが……。
こうしたなかで米司法省は、NSAに対する監督調査を行ってもいる。実に初めての監査だそうだ。
米司法省はしかし、その一方で、「国内におけるすべてのコミュニケーション」をモニターできる、一括した令状の交付を、同裁判所に申請している。
(大沼注:つまり、ブッシュ大統領の秘密命令を外国情報監視裁判所に追認させようとしている)
〔大沼 解説〕
ニューヨーク・タイムズ紙の今回のスクープ報道は、「9・11」以降、米国で急激に進む、自国民に対する監視強化の実態の一部を暴き出したものだ。
連邦議会の議員が法案を読む暇もなく、せかされ、成立させてしまった「USA愛国者法」の下、FBI(連邦捜査局)が、公立図書館に対し、ネット利用者の記録を出すよう命じたり、平和団体を盗聴したり、さまざまな市民的自由の侵害が行われている。
「USA愛国者法」は現在、期限の延長問題が米連邦議会で議論されているが、同法にさえ、今回、暴露された情報収集活動は盛り込まれていない。
盛り込んで「合法化」しようとしたら、批判を浴びるのは必至だからだ。
それほどまでに、違憲性の強いことを、ブッシュ政権は行って来たわけだ。そして、いまなお、行っている。
しかし問題は、ブッシュ政権として、なぜ、自国民500人に対して、盗視・盗聴活動を行う必要があるのか、という動機、あるいは狙いにある。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、「外国情報監視法(FISA)」は実は、ベトナム戦争を背景に、米国の情報機関の「国内における情報収集活動を厳しく規制するために」制定されたものである。
米国の政府権力が、ベトナム反戦の活動家らに対して盗聴活動を大規模に行っていたことが発覚し、その反省の上に生まれた法律が、このFISAである。
今回、暴き出された「特別情報収集プログラム」について、ブッシュ政権側は例によって「テロとの戦い」のためと口裏を合わせているが、FISAの成り立ちを考え合わせれば、イラク反戦運動の高まりを警戒しての措置であることは、一目瞭然である。
いつでも・どこでも情報監視下に置いている、NSAのターゲットの「500人」のなかに、反戦運動家でもある言語学者のノーム・チョムスキー氏ら、ブッシュ政権にとっての「要注意人物」が含まれているのは、間違いないところだ。
そうなると、どういうことが考えられるか?
これはいつか、本ブログで詳しく書こうを考えていることだが、「テロとの戦い」に志願して戦地に赴き、「友軍による誤射」で殺害された、プロフットボールのスター選手、パット・ティルマン氏の悲劇についても、見直しをする必要が出てくる。
ティルマン氏はイラクで、米国の「正義の戦争」に疑問を持ち、一時帰国した際、チョムスキー氏と連絡を取り合っていた事実が報じられているからだ。
つまり、そのことを、NSAもCIAもホワイトハウスも知っていた!!
「英雄・パット・ティルマン」が戦地から戻ってきて、「反戦」を言い出したら、どうなるか?
口封じをするにはどうしたら、いいか?
こうしたイラク反戦運動の抑圧とともに、もうひとつ、動機として考えられるのは、いわゆる「9・11」謀略の隠蔽工作の徹底であろう。
「同時多発テロ」が「やらせ」であることを証言・暴露する動きを察知し、未然に抑えこむには、法令に違反しても、この程度のことはやらねばならない。
ブッシュ政権は実はそういう状況にも追い込まれているのである。
「軍事と諜報のファシズムの帝国」に堕してしまったアメリカの、権力の闇は深い。
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Posted by 大沼安史 at 10:17 午前 | Permalink
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