〔コラム 机の上の空〕 パレスチナの少年 アーマド君 12歳 彼が隣人に遺したもの
ヨルダン川西岸、ジェニンのパレスチナ難民キャンプで11月3日、12歳の少年がイスラエル軍兵士の銃弾を浴びた。
パレスチナの過激派との銃撃戦の最中だった。
イスラエルの兵士が照準を合わせた、約130メートル先に、銃を手にした若者がいた。
命中した。
現場に駆け寄ったイスラエルの兵士は、倒れた少年が手にしていたものを見て、驚いた。
おもちゃの銃だった。
少年は虫の息で生きていた。ラマラの病院に急送したが、手に負えず、ハイファにあるイスラエルの病院に運び込んだ。
救命活動は実らず、少年は5日、死亡した。
アーマド・カティーブ君、12歳。
アーマド君の悲劇は、おもちゃの銃を持った少年まで殺す、イスラエル軍兵士の非人道性を示すものとして、ニュースとなって世界に広がった。
7日、アーマド君の話が、またも世界に、ニュースとなって流れた。
彼の両親が、彼の臓器の提供を申し出た。
腎臓病を患っていたアーマド君のお兄さんは、臓器提供を受けることなく、亡くなっていた。
そのことがあって、両親は腎臓などの提供を思い立った。
それも、イスラエルのユダヤ人のために。
イスラエルのハーレツ紙によれば、アーマド君の臓器は、ユダヤ人6人の命を救うことになった。
腎臓は5歳の少年に。
肺は5歳の少年と4歳の少女に。
肝臓は56歳の女性と生後半年の男の赤ちゃんに。
心臓は12歳の少女に。
アーマド君の父親は、「これは政治的な問題ではない。人間的な問題なのだ」と語った。
英紙インディペンデントによれば、ユダヤ人への臓器提供をめぐって、アーマド君の親族の意見は分かれた。
イスラエルの拘束されているパレスチナ人政治犯は獄中から電話をかけてきて、「敵に腎臓を贈るな」と言った。
憎しみをどう乗り越え、パレスチナの平和を息づかせるか。
アーマド君は6人の隣人のなかに、命と希望を遺した。
Posted by 大沼安史 at 11:37 午前 3.コラム机の上の空 | Permalink

















