〔NEWS〕 アルカイダNO2 「ザワヒリからの手紙」を読む
米国諜報網のトップに立つ、ネグロポンティ情報長官のウェブサイトに、アルカイダのNO2であるザワヒリ容疑者から、「メソポタミアのアルカイダ」を名乗る、在イラクのテロリスト・リーダー、ザラクァイに宛てた書簡とされる文書が掲示された。
米政府高官からのブリーフィングを受け、米マスコミが10月12日に一斉に報じた。
ニューヨーク・タイムズ紙もまた、この文書が「初めて明らかになった、ザワヒリからザラクァイあての手紙」であると断じている。
本当だろうか?
各紙の報道を検証し、ウェブサイトに載った、「無修正」(政府高官)の書簡の英訳全文に目を通してみた。
まず、米国がこの「書簡」をどのような経緯で入手したかについて、政府高官は「イラクにおける反テロ作戦行動のなかで手に入れたもの」とだけ述べた。
「書簡」がザラクァイあてのものであることについて同高官は、「それは絶対間違いない」と断言した。しかし、米国の情報当局が、どのような経過でそうした結論にたどり着いたか、については口を噤んだ(ワシントン・ポスト紙)。
ということはすなわち、ザワヒリからのザラクァイあての手紙なるものは、あくまでも米国の主張に基づくもの。それ以外の何ものでもない、ということである。
そうした前提を踏まえた上で、「書簡」の内容を検討すると、「7月9日」付けの日付が記されたこの書簡は、ニューヨーク・タイムズ紙が指摘するように、驚くほど「静かで、繊細な言葉」で綴られていることである。情勢の分析・展望も、実にしっかりと冷静に述べられている。
書簡について報道した米マスコミは、発信者がアルカイダNO2のザワヒリであることについて一様に疑問をさしはさんでいないが(あて先のザラクァイについては、ワシントン・ポスト紙がほんとうにそうなのかと疑問を投げかけている)、それも、むべなるかなの内容である。
さて、この「書簡」の情勢分析で驚かされたのは、「米軍がイラクを間もなく撤退する」と予測していることである。
「われわれの予測を超える速度で、物事は進展するかもしれない。ベトナムの崩壊後のことを知るべきである」と。
アメリカは出ていく。問題はそのあとにどう備えるか。
「アメリカ人や国連が撤退後の空白を埋める陰謀」をめぐらす前に、われわれは準備を始めなければならない。「われわれは、戦闘・戦争と平行して、フィールドワークを始めなければならない」と、ザワヒリは警告しているのである。「それが何より重要なことである」と。
そのために何をなすべきか?
ザワヒリは、そこでアフガニスタンの教訓を持ち出す。「タリバンが犯した誤りを繰り返してはならない」と釘をさすのだ。
タリバンはアフガンの民衆を代表するものでなかったので、アフガンの民衆はタリバンを捨てた、と。
タリバンのような狭隘な路線をとってはいけない。「同盟と協力、あらゆる意見と影響力を持つリーダーたちの結集による政治的なアクション」をとる必要がある。ザワヒリはそう繰り返し強調するのである。
同盟と協力、あらゆる意見と影響力を持つリーダーたちの結集とは具体的にはどういうことか。
それは、スンニ派、シーア派の仲間割れは止めにしろ、ということである。
ザラクァイらスンニ派テロリストたちに向かって、もうシーア派に対するテロは止めなさいと言っているのだ。
シーア派の一般民衆を殺害し、その場面をビデオで流して何になる。われわれにとって大事なことは「民衆たちの支持」であり、「われわれイスラム戦士(ムジャヒディン)は、民衆が承認・支持しない、いかなる行動もとってはならない」。これがザワヒリの「書簡」の核心にあるメッセージである。
それどころかザワヒリは、「英語の諺にあるように、木の葉に隠れた者には樹は見えない」、イラクの同胞よ、現実を直視しろ、という警告さえしているのである。
この書簡が、米情報当局が言うように、ザラクァイに宛てたものであるならば、それはアルカイダによる「指令文書」というよりも、「戒め」あるいは「訴え」の手紙と言ったほうが、むしろ実態に近い。
「メソポタミアのアルカイダ」を名乗るザラクァイ一派の暴走に歯止めをかけようとする、必死の思いさえ感じられる手紙のトーンである。
先述の通り、米国情報当局は、このザワヒリの書簡をザラクァイ宛てのものと主張し、そのことによって、アルカイダとザラクァイの連携、「9・11」と「イラク戦争」の関連性を浮き彫りにしようとしているわけだが、ザラクァイとアルカイダとの密接な「共謀」なり「共闘」関係は、公開された「書簡」のどこからも見えてこない。
実態はマ逆。ザワヒリが書簡で何度も言っているように、アルカイダはイラク情勢を「遠くから」見ているだけなのだ。
「書簡」の結びに、ザワヒリのこんな言葉がある。
あなたがもし、(大沼注・バグダッドの西にある、武装抵抗勢力が一時立てこもった都市である)ファルージャに行くなら、ザラクァイによろしく言ってくれ、と。
ネグロポンティ長官がアルカイダとザラクァイとの関係を証明する「動かぬ証拠」として公開したこの「書簡」は、結局のところ、両者の疎遠な仲と考え方の違いを際立たせる、仲介者にあてたものでしかないわけだ。
アルカイダのザワヒリたちは、書簡にもあるように「(衛星放送の)アルジャジーラも見えない」(たぶんアフガンの)某所において、ザラクァイたちの行動に胸を痛め、その動機に疑問を投げかけているのだろう。
シーア派のイラク人を殺戮するお前らは、イラクのタリバンではないか?と。
もしそうでなけば、お前たちは、どこの回し者なのだ?と。
ザラヒリたちの目は鋭い。
書簡の全文は⇒
Posted by 大沼安史 at 05:46 午後 | Permalink

















