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2005-10-07

〔NEWS 解説〕 大統領 かく語りき 「10・6ブッシュ演説」を読み解く

 ブッシュ米大統領が10月13日、首都ワシントンで開かれた、ネオコン系のシンクタンク、NED(The National Endowment for Democracy)の集会で演説した。

 米国内における支持率急落、対外的な威信の下落、イラク戦争の泥沼化、「カトリーナ」後遺症のなかで、ブッシュ大統領はどのような「弁明」をしたのか。

 ホワイトハウスが「重大演説」と予告していた大統領のスピーチを、ワシントン・ポスト紙が収録したトランスクリプト(全文)で点検してみた。

 ブッシュ大統領として「最長」のギネスもの演説だった今回の「10・6 対テロ戦争」スピーチは、残念なことに、案の定、これまで以上に、きわめて好戦的なトーンに貫かれていた。

 瀬戸際に追い詰められたネズミがネコを威嚇するように、米国民と世界に対して、まるで妄想に取りつかれた者の如く、「イスラム・ファシズム」の「恐怖」をふりまき、「完勝」するまで、アメリカは戦い続ける、と言い放った。

 世界はこういう男を、史上最強国の指導者としている。わたしたちは、かくも悲しく、恐ろしい、時代に生きているのだ。

 あの一時は親しみさえ感じさせた、テキサス男、ジョージ・ブッシュJr.のイメージは、どこに消えたのか?

 大統領のスピーチは、「脅迫」に満ちていた。

 たとえば、イスラム過激派のネットワークは、イラクを根城に、穏健な諸国の政権を転覆し、ついには「イスラム帝国」をつくろうとしている、との言い回し。

 そしてその帝国は「(西は)スペインから(東は)インドネシア」に達する、というご教示。

 つまりは、イスラム過激派に、そういう恐ろしいものを黙ってつくらせていいのか、という脅しである。

 (大統領の「インドネシア」への言及は、バリ島でのテロを踏まえてのものだろうが、それにしても、絶妙のタイミングで「バリ島テロ」が起きたものだ……)

 大統領はさらにこう指摘して、脅しの追い討ちをかける。

 ビンラディンやザラクァイは、スターリンやヒトラー、ポルポト並みの者どもであるから、放っておいたら、たいへんなことになる、というのだ。

 戦時中の日本の戦争指導者の名が出なかったのはせめてもの救い(?)だが、ビンラディンはともかく、あのザラクァイをヒトラーと同列視しているのには驚いた。

 ザラクァイなるヨルダン人を、アメリカのCIAの回し者だとフツーに思っているアラブ人が聞いたら、腰を抜かしてしまうではないか? (あるいは爆笑してしまう?……)

 ビンラディンやザラクァイらについて、大統領はこう解説を加える。

 「ある人はこれを、邪悪なイスラム過激主義という。あるいは、軍事的な聖戦主義とも。そしてさらにある人は、イスラム・ファシズムと呼ぶ」

 「イスラム・ファシズム」(?)――すごい造語が飛び出したものだ。ヒトラーも、聞いてビックリの新語である。

 大統領はこれに止まらず、以前、どこかで聞いたことのある、脅しをかける。

 イランに対する警告として「(それを手にしたら)躊躇なく使うであろう、不法な体制やテロリストの同盟者が、大量破壊兵器を持つことを断固として拒否する」と言い切ったのだ。

 「大量破壊兵器」?、そう、あのイラク戦争の開戦理由になった、あの「WMD」。

 イラク戦争ぐらいで何をガタガタ言っている? イランでは(サダム・フセインが開発を放棄した)WMD計画がまさに進行中。これを片付けしまわなければ、安心して眠れないんだよ、核がイスラム過激派の手にわたったら、どうなるんだ、という脅迫である。

 二番煎じの「WMD脅し」まで持ち出すあたり、よほど追い込まれてのことと、ついつい同情したくもなったが、あの「9・11」以降、これまで少なくとも10回、アルカイダのテロ計画を未然に食い止めたというくだりを読んで、背筋に寒気を覚えた。

 ほんとうなのか? ほんとうだったら、ブッシュ政権の「脅し」を、もっと真剣に受け止めるべきではないか、という反省心が芽生えたのである。

 そこで、ブッシュ大統領の演説にあわせ、ホワイトハウスが発表した「テロ未遂事件リスト」に目を通してみた。そして、それに対する米マスコミの点検報道をチェックしてみた。

 安堵すると同時に、「またか」と怒りがこみ上げて来た。

 ロサンゼルス・タイムズ紙の報道(10月7日付け、電子版、Bush Linkes War on Terror to Cold War)によれば、リストに載った「アメリカの都市に対する3件のテロ計画」について、連邦政府司法当局の複数の高官は、匿名を条件に、同紙に対して、「そのような陰謀の証拠をまったくつかんでいない」と言明した、という。

 さらに「2002年の米国西海岸、2003年の東海岸に対する空からの(第2派)体当たりテロ」については、「計画が阻止された事実をまったくもって知らない」と、明言しているありさま。

 どうしてそうした根拠のない「テロ計画」を、ブッシュ大統領のホワイトハウスがリストに載せたか、という同紙の問いに対し、ある反テロリズム担当者は、こう答えたという。

 「誰しも、自分流の数え方がありますから」

 何をか言わんや、である。

 イラク戦争開始以来、NEDにおけるブッシュ大統領の演説は、今回が2回目。前回、2003年6月のNED20周年記念式典での演説は、「デモクラシー」を世界に広げていくのだという、「前向き」というか、「希望」を喚起するトーンだった。

 それが今回は、「恐怖」を煽りたてる内容に。

 それは朝日の夕刊(7日付け、4版)のブッシュ演説紹介記事の本記(下記のリンクでも電子版を読むことができます)の見出しにもあるように「危機感あおり支持ねらう」ものであったことは確かだが、それにしても度の過ぎる、妄想的・扇情的な、まさに「重大演説」であったといわざるを得ない。

 まさか、とは思うが、ブッシュ大統領にはもしかしたら、パラノイア的な傾向があるのだろうか?

 今回の「10・6演説」と相前後して、ロンドン発の、あっと驚くニュースが世界を駆け巡った。

 英国BBC放送のパレスチナ・イスラエル問題の特集ドキュメンタリー番組のなかで、2003年6月、ブッシュ大統領がパレスチナの外相らに語ったという、「神がかり発言」が流れた。

 ナビル外相は、ブッシュ大統領はみんなの前でたしかにこう言ったと証言した。

 「わたしは神から下った使命に動かされている。神は言い給うた。『ジョージよ、アフガンに行ってテロリストと戦いなさい』。そこでわたしは、行って戦った。すると、神が言われた。『ジョージ、イラクにいって圧制をなくしなさい』。で、わたしは行って、戦った。そしていま、わたしは再び、神の言葉を聴く思いがしている。『パレスチナ人のため国を得なさい。イスラエルの安全を得なさい。そして中東に平和を』。わたしは神によって、それをなすであろう」

 ブッシュ大統領、かく語りき……。

 これまた、今回の「10・6演説」に並んで、歴史に残る「名言」といわねばなるまい。 

 いや、ニーチェも驚く、スーパーマン的な「妄言」として……。 
 

★ ブッシュ演説 朝日(電子版) 本記
 ⇒  http://www.asahi.com/international/update/1007/002.html

★ 朝日(同)解説 「危機感あおる」
 ⇒  http://www.asahi.com/international/update/1007/008.html

★ 朝日関連記事(同)「テロ阻止 10件以上」

 ⇒  http://www.asahi.com/international/update/1007/007.html

Posted by 大沼安史 at 10:12 午後 |

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