〔NEWS 解説〕 「プレイム・ゲート」裁判 そのスペクタクルな行方
ブッシュ政権による「イラクWMD保有」宣伝工作にからむ「プレイム・ゲート」事件は、チェイニー副大統領の懐刀であるルイス・“スクーター”・リビー首席補佐官が起訴されたことで、舞台は連邦地区裁判所の法廷の場に移ることになった。
リビー被告のほか、ブッシュ大統領の次席補佐官、カール・ローブ氏も刑事訴追される可能性があり、正副両大統領の側近中の側近がそろって法廷に立たされることも十分ありうる情勢だ。
チェイニー副大統領が証人として呼ばれ、尋問の十字砲火を浴びることもある。
ブッシュ大統領には大統領として免責特権があるが、副大統領にはなく、今後、チェイニー副大統領に批判が集中することも十分ありうる。
クリントン前大統領のセックス・スキャンダル、「モニカ・ゲート」事件の際、ホワイトハウスに乗り込んで、事態収拾に手腕をふるったラニー・デイビス弁護士は、ホワイトハウスがリビー被告をトカゲの尻尾として斬り捨て、疑惑のもみ消しと批判の沈静化を図ろうとしても、「チェイニーという巨象がうろつきまわっているかぎり、それは不可能」と見ている。
リビー被告が羊のごとく、主人をかばおうとしても、そうすればするほど、疑惑はますます深まり、事態は悪化するだろうという読みだ。
ちなみにデイビス弁護士は、「モニカ・ゲート」事件を落着させたあと、『告げるべき真実』という本を書いているが、その副題は「一日も早く・すべてを包み隠さず・本人が話す」だそうだ。
今後の裁判の過程で、もっとも注目されるのは、リビー氏が司法取引に応じるなどして、真相を語り始めるかどうか、だ。
いまのところ、起訴された罪状は、司法妨害や偽証などで、これでも最長懲役30年、または125万ドルの罰金を科せられるが、今後、フィッツジェラルド特別検察官がリビー被告を、CIAエージェントの身分漏洩の犯人として特定し、諜報法違反の罪で追起訴するようになことになれば、死刑もありうることになり、リビー被告としも考え直さざるを得なくなるだろう。
リビー被告自身、法律事務所に勤務したことのある弁護士であり、当然、自身をどう弁護すべきかぐらいは考えているはずだ。
国務省のアジア部局にいた当時の知識と経験をもとに、明治30年代の日本の雪国を舞台に、セツオという徒弟奉公の若者を主人公にした小説、『The Apprentice(徒弟、または丁稚)』を書き上げ、出版したこともある、作家的資質にも恵まれたリビー被告のことだから、裁判をめぐるさまざまなシナリオを思い描いていることだろう。
徒弟奉公の果ての責任転嫁に嫌気をさしたリビー被告が衝撃の告白をして、チェイニー副大統領が起訴される、といったドラマチックな展開も、ないわけではなかろう。
もし、これ以上のスペクタクルがあるとすれば、それはおそらく、CIAエージェントの身分漏洩事件の引き鉄を引いた、ワシントンの政治コラムニスト、ローバート・ノバク氏が証言に踏み切ったときのことである。
それも、ノバク氏が「漏洩源は(リビー氏ではなく)ローブ氏である」と言ってしまったときのことだ。
ローブ氏はブッシュ大統領の側近中の側近。
そのローブ氏が起訴され、ブッシュ大統領も知ってましたと言い出しでもしようものなら、これもう、ブッシュ政権の完全崩壊につながっていく。
フィッツジェラルド特別検察官は、リビー氏を起訴したあと、オフィスを縮小するどころか、近隣のビルをリースして、捜査の態勢を強化している。
「新アンタッチャブル」こと、フィッツジェラルド特別検察官による捜査の継続、リビー被告の裁判の開始、それと平行して進むイラク戦争の泥沼化。
リビ―氏起訴は、嵐の前の、序幕の幕開けに過ぎない。
Posted by 大沼安史 at 02:07 午後 | Permalink

















