〔コラム 机の上の空〕 イラク反戦 ノーベル賞受賞 ハロルド・ピンター氏の言葉
英国の劇作家、ハロルド・ピンター氏(75歳)が、ノーベル文学賞を受賞した。
東欧から来たユダヤ人の移民の子。ロンドンの東、ハクニーの洋服屋の倅。
子どもの頃、ユダヤ人迫害を経験したことが、その後の人生を決定づけた。いわれなき差別と抑圧。それに対する内心の抵抗。
演劇学校に進んで、アイルランドの劇団で役者となり、1957年、最初の戯曲、「部屋」で劇作家としてデビューした。
「短く、ときに威嚇的な言葉を使って、無力と支配、顔のない国家の圧制をテーマに、探り続けて来た」(ニューヨーク・タイムズ紙)という。
政治的な立場を鮮明にした人でもある。
イラク反戦!
ブレア政権の戦争遂行に反対し、アメリカの暴力的な帝国主義を批判して来た。
「特別な関係」という詩を書いて、米英両国の同盟が腐朽していくさまを描き出した。
そういう劇作家がノーベル賞を受賞した。
即時停戦を求めるその声に、ジョージ・ブッシュら、戦争屋どもは、大言壮語と嘘と脅迫で詰まってしまった耳穴をかっぽじり、姿勢を正して、しっかり聴き入るべきだろう。
世界は最早、メソポタミアのシアター(戦場)での残虐と悲惨に耐え続けることはできない!
英国のインディペンデント紙(10月14日付け、電子版)に、ピンター氏がことし、「ウィルフレッド・オーウェン賞」を受賞した際のスピーチの抜粋が載っていた。
ウィルフレッド・オーウェン(1893-1918年)は、英国の戦争詩人。第一次大戦に参加し、西部戦線で戦死した。
ピンカー氏は、彼(オーウェン)が生きていたら、イラク侵略をなんと詠うか、と自問し、自らこう答える。
狼藉、明らかな国家テロ、国際法に対する侮蔑の証明、嘘の上に嘘を重ねた嘘シリーズで鼓舞された恣意的な軍事行動、大掛かりなメディア、大衆の操作…………
米英がもたらした諸悪を次々に、言葉の舞台へと呼び込んだあと、主役の二人、ブッシュとブレアが鏡のなかで自分たちの姿を見たら、どう見えるか、と続け、最後にこう締め括る。
「わたしは信じています。米英両政府の言動に対する、わたしたちの(彼らに対する)蔑みを、わたしたちの憤りを、わたしたちの吐き気を、わたしたちの恥辱を、ウィルフレッド・オーウェンもまた、あわせ持っている、と」
その蔑みと憤り、吐き気と恥辱を、日本のわれわれもまた、ともにしなければならない。
Posted by 大沼安史 at 07:55 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink

















