〔教育改革情報コラム 夢の一枝 ③〕 アンネ・フランクの机の上で
オランダのアムステルダムにある、アンネ・フランクの住んでいたアパートが改装され、10月29日にオープンした。
戦時中、あの、ユダヤ人少女が家族とともに潜み、ナチスの手に引き渡されるまで「日記」を書いていたアパートである。
改築工事の完成を祝う式典には、アムステルダムの市長と、アンネの親族の最後の生き残りである、バディー・エリアスさんが出席した。
時計の針を昔に戻す改築工事だった。
戦後に付け加わった要素はすっかり取り払われ、アンネが生きた当時の空間が戻った。
市の住宅局に代わって、「アムステルダム難民都市財団」が管理を引き受け、毎年1人、政治的な迫害にも負けず、執筆活動を続ける、世界の作家に提供する。
最初の「アンネの家の作家」には、アルジェリアの小説家であり詩人でもある、エル・マーディ・アチェルショールさんが選ばれた。
アチェルショールさんは、歴史の嵐に耐えてきた、この象徴的な部屋の中で、新しい小説を書く。
こんな話を、英紙インディペンデント紙(電子版)で読んで、朝から感動した。
レトロに改装された「アンネの部屋」には、アンネの使った木の机が、昔のまま、置かれるのだという。
それを使って、現代の迫害を生きる作家は書く。
「アンネの日記」が綴られた、その机の上から、新しい作品が生まれる。
それはきっと、希望の文学になるに違いないと思った。
政治的、社会的、文化的、あるいは宗教的な迫害の下、文章を書き続ける作家にとって、机の上は最後の拠り所であるだろう。
その四角い小さな空間こそ、作家にとっての「世界」であり、生きる場所である。
だれにも邪魔されない机の上……
それはもしかしたら、「低学力だ」、「意欲がない」、「生きる力に欠ける」と罵られ、点数と序列の迫害にさらされ続ける、日本の子どもたちにとっても、大事な大事な、絶対に守られるべき、プライベートで不可侵な、秘密の場所だといえるかもしれない。
机の上の自由と平和は、いつの時代も、どこにあっても、希望の灯火のように守られなければならない。
それは、「日記」をもっともっと書きたかったに違いない、13歳のアンネの思いでもあるだろう。
少女の祈りが宿る「アンネの机」が甦った。

















