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2005-09-10

二都物語

ニューオルリーンズとファルージャは、いまや双子の都市である――米国のベテラン・ジャーナリスト(UPIエディター)、マーティン・ウォーカー氏の指摘である。

 ニューオルリーンズは言うまでもなく、ハリケーン「カトリーナ」に襲われた、湾岸地帯(ガルフ)の街。ファルージャとは、昨年(2004年)11月、米軍が侵攻し、徹底した掃討作戦を展開した、バグダッド西方のイラクの都市だ。

このふたつの都市がまるで双子のように、そっくりである……。そう、ウォーカー氏の言うように、たしかにその通りである。

ニューオルリーンズでも、ファルージャでも、大量の犠牲者、難民が出た。それも、数十万人規模で。

一方は、ブッシュ政権の予防・救援対策の無策のなかで、暴風と洪水により壊滅し、他方は、ブッシュ大統領を最高司令官に仰ぐ米軍の「鉄の嵐」によって破壊された。

ニューオルリーンズに投入された、イラク帰りのアーカンソー州の州兵は、死臭漂う現場を見て、「まるでイラク。まだ、バグダッドの方がましだ」と語った。

収容した遺体を入れるボディー・バッグは、2万人分用意されているが、捜索作業は遅々として進んでいない。それがニューオルリーンズの現状である。

「カトリーナ」が直撃したその日、6000人ものルイジアナ、ミシシッピー両州州兵が、イラク、アフガンで戦闘に従事していた。本来、地元を守る(ガードする)のが、州兵、すなわちナショナル・ガードの務めである。

家族、友人が暮らす地元を、いま、猛烈なハリケーンが襲っている。守ってあげたいのに、何もすることができない……彼(女)らはどのような思いで、戦地での任務に就いていたのだろう。

ブッシュ政権の下、イラク戦争の戦費を捻出するため、ニューオルリーンズの防災対策経費が削られていたことも明るみに出た。

強大なハリケーンが来たら、ひとたまりもないと、地元の大学が警告を発していたにもかかわらず、予算は大幅にカットされていた。

その予算の5倍もの経費を、誰も住んでいないアラスカの橋の建設プロジェクトに使われていたこともわかった。

深南部は黒人貧困層が集中する地域。連邦政府のお粗末な対応に、ジェシー・ジャクソン師ら黒人指導者から非難の声が上がった。

そんなニューオルリーンズは、ファルージャ同様、いま米軍の事実上の戒厳令下にある。街に踏みとどまった市民らを強制的に退去させる措置を取り始めている。洪水被害を免れた高台に住む人まで追い出そうとしている。

いったい、何のための戒厳令なのか。

連邦政府当局は疫病対策などをその理由に挙げているが、最大の目的は1万5000人以上になると見られる、おびただしい収容遺体を、国民の目に晒さないことだろう。

イラクでの戦死者の遺体の映像、負傷者の悲惨な姿を、ペンタゴンは報道規制を通じて隠し続けてきた。それと同じことを、ニューオルリーンズでも狙っているのである。

腐乱した遺体が大量に出て来る光景がメディアを通して流れれば、ブッシュ政権に対する非難は頂点に達するだろう。それをなんとしても阻止する。それが危機に立つ政権の最重要課題である。

イラクのゲルニカといわれたあのファルージャの悲惨が主流メディアを通じてほとんど流出しなかったように、ニューオルリーンズを封鎖してしまおうとしているのだ。

英紙「ガーディアン」に、女性コラムニストのナオミ・クライン氏が書いていた。「ニューオルリーンズの人々に権力を!」。

ファルージャの市民と同様、ニューオルリーンズの民衆にも、土地にとどまり、生活を立て直す権利がある。(2005・9・10)

Posted by 大沼安史 at 11:36 午前 3.コラム机の上の空 |

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