〔NEWS〕 ペンタゴンのモール(モグラ)、有罪認め司法取引へ イスラエルの対米スパイ活動、明るみへ
イスラエルに対する機密情報漏洩容疑で逮捕・起訴され、無実を主張していた米国防総省(ペンタゴン)の元アナリスト、ラリー・フランクリン被告が一転して、一部の罪状について有罪を認め、司法取引に応じることになった。
ニューヨーク・タイムズ紙やAP通信が9月29日に報じた。
フランクリン被告(58歳)は、ペンタゴンのナンバー3だった、ネオコンのファイス元国防次官の下で、中東、イラン問題に関する機密情報を取り扱ったこともあるベテランのアナリスト。
イスラエルの在米ロビイスト団体である「AIPAC」のスティーブン・ローゼン、ケネス・ワイズマンの2人(ともに起訴済み)に対し、1999年以降、アルカイダやイランの核開発などに関する最高機密を提供したほか、イスラエルの政府関係者1名に対して直接、会って情報を漏洩した罪で、ことし6月、起訴された。
起訴状には、フランクリン被告が「国家安全保障会議(NSC)」内のポスト獲得のため、ローゼン被告に協力を求め、ローゼン被告がこれに「ブッシュ大統領の肘の一押しがあればいい」と応じる、といった、生々しいやりとりも書かれている。
フランクリン被告はこれまで自らの無罪を主張する一方、FBIに対して協力してきた。今回、一部罪状について有罪を認め、司法取引に応じることにしたのは、減刑の可能性を探るためとみられる。
10月5日にバージニア州アレキサンドリアの連邦裁判所で行われる罪状認否で有罪を認める予定だ。
イスラエル側にとって問題なのは、これにより、ローゼン、ワイズマン両被告が有罪判決を受ける可能性が強まったことだ。
フランクリン被告が司法取引のなかでどこまで暴露するかは不透明だが、AIPACを通じたイスラエルによる対米スパイ活動の大筋が浮かび上がることは間違いないところだ。
同被告の暴露が、事実の核心に切り込む可能性もないわけではない。
ローゼン、ワイズマン両被告はことし4月、AIPACから解雇されている。
(大沼注)チェイニー副大統領側近のリビィー氏による漏洩疑惑の発覚といい、このフランクリン被告がからんだ対イスラエル機密漏洩疑惑の深まりといい、斜陽のブッシュ政権の末期の姿を象徴するようである。
ブッシュ政権にとって事態はまさに深刻。ホワイトハウスと連係して米国政治をほしいままにしてきた連邦議会共和党の上下両院指導者が、政治スキャンダルにより相次いで信用を失墜する事態さえ同時並行的に生まれてもいる。
米国の政治権力をコントロールする支配層主流による「ブッシュ離れ」「ブッシュ外し」がすでに始まっているのかも知れない。
ペンタゴンのモール(モグラ)、ラリー・フランクリンについても、拙著『戦争の闇 情報の幻』(本の泉社)を参照していただければ幸いである。
Posted by 大沼安史 at 06:41 午後 | Permalink | トラックバック (0)